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REACH

これまで系外惑星の環境を知ることができる方法は、トランジット惑星のトランジット半径の波長依存性を調べる透過光分光、同じくトランジット惑星の二次食を前後を利用して惑星放射を捉える昼側分光、直接撮像の三つに限られていた。しかし、近年、透過光もしくは惑星放射+主星光を高分散分光し、分子吸収ラインのテンプレートリストと相関をとることにより、直接、惑星大気の分子を検出する新手法が成功しつつある(Snellen+2010, Brogi+2012, Rodler+2012, Birkby+2013など)。この新手法は、まだ定まった名前が無いが、Spectroscopic Direct Detection (以下SDD)などとよばれている。SDDでは主に惑星の公転運動に起因する視線速度変動が直接測定できる(惑星視線速度)。最終的にはバイオマーカ探査を目標におきながら、最近はこの手法の応用を考えている.

  • 系外惑星の分光直接検出で恒星光を抑制する装置コンセプト

 恒星と惑星を分離せずに高分散分光し、分子吸収ラインのテンプレートリストと相関をとることにより、直接、そこに含まれる惑星放射光の分子を検出する新手法が数多く成功しつつある(Brogi+2012, Rodler+2012, Birkby+2013など)。この手法はまだ定着した名前は無いがここではSpectroscopic Direct Detection (以下SDD)とよんでおく。SDDでは主に惑星の公転運動に起因する視線速度変動が直接測定できる(惑星視線速度)。この手法では、惑星のシグナルはスペクトル的に分離されるため、主要なノイズ源は恒星の光子ノイズである。つまり望遠鏡の直径を3倍にしても、S/Nは3倍よくなるだけである(集光限界)。

 一方、直接撮像用の高コントラスト装置、すなわち極限補償光学、コロナグラフ、ポストプロセスといった装置群は、元来、恒星光を抑制し、惑星のイメージを分離するために開発されてきている。この高コントラスト装置をSDDと組み合わせて集光限界を超える事が出来ないか考えた。つまり、高コントラスト装置を、直接撮像的な空間的な惑星の分離に用いるのではなく、恒星の光子ノイズを除くために用いるSpectroscopic Coronagraphを提案した。現在ではHigh Dispersion Coronagraphyと呼ばれることが多い。

 SDDで惑星の放射を検出するためには、惑星放射が強くないとならない。現在では高温のホットジュピターでのみSDDが成功している所以である。すなわち、SDDのターゲット惑星は恒星に非常に近くに存在し、直接撮像で空間的に分離する事は非常に困難である。しかし、空間的に分離できなくても、恒星光強度を惑星に対し相対的に抑制し、SDDにおけるS/Nの向上をさせることを、すくなくともあるタイプのコロナグラフ(Visible Nuller)では、できることをみつけた。

 しかし、実はコントラストにして50倍くらいは改善されている。この ムービー では、上の図の恒星と惑星光を、50msフレームごとの焦点面イメージでみたものである。 このムービーで見ると、各瞬間では惑星に比べ恒星光が抑制されているのが見て取れる。これを積分すると上の図のようになるのだ。この光をスリットかファイバーにいれて高分散分光すれば、SDDのS/Nの向上が見込まれるという仕組みである。実はこの論文[1]では、高コントラスト装置をSDDに用いるというSpectroscopic Coronagraphの装置コンセプトを示しただけであって、最適なコロナグラフやその他仕様はまだ良く分からない。Spectroscopic Coronagraphの実証実験を 北海道大学, や下記のSCExAO/IRDチームと共同研究中である。

  • REACH ( Rigorous Exoplanetary Atmosphere Characterization with High dispersion coronography) =すばる望遠鏡での高コントラスト+高分散

上記のように、高コントラスト装置に高分散分光を組み合わせると、惑星視線速度検出の性能が格段に飛躍する事が予想される。そこで、すばる極限補償光学SCExAOとIRDの装置開発チームのOlivier Guyon氏, Takayuki Kotani氏、Nemanja Jovanovic氏, Julien Lozi氏、Sebastien Vievard氏、Masato Ishizuka氏、Ananya Sahoo氏らとSCExAOとIRDを繋ぐpost-coronagraphic injection の開発( REACHプロジェクト )を行っている。2019年にオンスカイテストに成功し、2020年からは共同観測装置となった。

研究費

科研費基盤A 分散コロナグラフによる系外惑星大気の探索 およびRESCEU, ABCにサポートを受けている。

References

Spectroscopic Coronagraphy for Planetary Radial Velocimetry of Exoplanets

Hajime Kawahara, Naoshi Murakami, Taro Matsuo, Takayuki Kotani, accepted for publication in ApJS, ApJS, 212, 27 (2014), arXiv:1404.5712, IOP