系外惑星のスペクトルからは、惑星の質量や大気中の元素組成を推定することができますが、その精度を制限する主要な系統誤差の一つが分子線データに起因します。分子線は背景大気とのファンデルワールス相互作用によって広がり(圧力広がり)、その広がり幅は背景大気の組成に依存します。現在、詳細に観測可能な系外惑星大気の多くは、高温の水素・ヘリウムを背景大気として有しています。しかし、このような条件下における分子線データはほとんど整備されておらず、スペクトル解析における本質的な不定性となっています。
そこで本研究では、系外惑星大気を模した高温の水素・ヘリウム大気環境を実験室内で再現し、その環境下で分子(例えばメタンや一酸化炭素)のスペクトルを取得することで、系外惑星で観測されたスペクトルの解析精度向上を目指しています。実験は、耐爆設備を備えた宇宙科学研究所あきる野実験施設において実施しています。
References
Measurement of Methane Line Broadening in Hot Hydrogen/Helium Atmospheres at lambda = 1.60–1.63 mu m for Substellar Object Spectroscopy
Ko Hosokawa, Takayuki Kotani, Hajime Kawahara, Yui Kawashima, Kento Masuda, Aoi Takahashi, Kazuo Yoshioka, ApJ 984, 92 (2025), arXiv:2503.22031